カジノに挑戦 (マカオ)

 
 カジノの前に着いた。辺りはまるで昼間のように明るい。カジノの看板がギラギラと光る。カジノの前には、シクロが一列になって待機している。そして、パトカーも1台。木の陰には老婆がお椀を持ち、地べたに座っている。すこし緊張しながら、僕らは中へ入った。すると、右側には賭場へ向かう入り口、左側にはクロークルーム、その間に賭場からの出口があった。近くにいた兄ちゃんが僕らに向かって、クロークルームを指差すのでそれに従った。
クロークルームに入ると、カウンターに2人の女性がいた。1人は客となにやら話し、もう1人は暇そうにしている。暇そうなほうは40歳ぐらいで、肌の色は日に焼けて黒く、体格がかなりよい。眉間には2、3本皺が入り、黒い小さな長方形のメガネを鼻に掛けている。その様はアジア版ウーピー・ゴールドバーグといった感じだ。気の弱い僕には、当然、苦手なタイプなわけで、申し訳なさそうに話し掛ける。
 「すみませーん。」
きっと愛想笑いをしているだろう。
 「はい、荷物出して!」
大きく軽快な声が僕をさらに怯えさせる。僕はそそくさとリュックを下ろし、カウンターに差し出す。
 「xxxxカメラxxxxxx」
しまった。油断してウーピーの話しが聞き取れなかった。
 「すっ、すいません。もう一回お願いします。」
すると、ウーピーは、 
 「あんた日本人かい?」と。
 「はあ」
ウーピーは話すのを諦め、小さな紙をカウンターに叩きつけるようにして置く。そして、それの1箇所を指差し
 「サイン」と一言。
僕はお手数かけてすみませんと思いつつ、紙にサインする。ウーピーは無言でそれを半分に切り、切った片方をスナップを効かして、僕に差し出した。僕は慌てて受け取る。ウーピーは、右手にリュック、左手にもう1片の紙を持ち、カウンターの奥に消えていった。僕もさっさとクロークルームを後にして、賭場への入り口の向かった。
入り口を通過し、扉をくぐり、賭場に出る。すると、時代劇のように「さあぁ。半か丁か。はったぁ!はったぁ!」という威勢のよい掛け声はないが、熱気と緊張は空間に満ちていた。直径約50〜60メートルの背の低いきのこ型の空間で、一段低くなった円形のスペースにはブラックジャックや大小などのテーブルが、お互い均等な間隔で規則正しく並べられている。僕らは1つのテーブルを見に行った。が、人の壁でテーブルがまったく見えない。両手で人を掻き分け、背を伸ばしやっとの思いでテーブルを見た。テーブルは、中央を境に左右に1つずつ、ルーレットで見るようなマスメの長方形が書かれている。そして、それぞれのマスには「大」、「小」、数字、サイコロの目などが書かれている。テーブルの反対側にはディーラーが3人いて、見張るように左右に1人づつ。中央に1人。中央のディーラーの手元にはガラスの容器があり、その中にはサイコロが3つ見える。「チン、チン。」とベルが鳴る。中央のディーラーはガラス容器にヘルメットのような黒いカバーを被せ、サイコロを隠す。「ドン、ドン、ドン。」容器に付いたボタンを叩き、サイコロを振る。左右のディーラーが賭けの開始を知らせると、客は思い思いに賭け始める。あの紳士は大。あの娘さんは小。あの若者は3個同じ目が出れば当たりのマスに賭ける。そんな模様が2分間テーブルで繰り広げらる。「チン、チン、チン。」再びベルが鳴る。左右のディーラーが賭けの終わりを告げる。テーブル上の空気が固まる。・・・・・。ディーラーがカバーを開ける。周りの客は、小さな小さなサイコロの目を一生懸命覗き込む。「6じゃない?」「いや。5だろう。」と左のほうで聞こえれば、右のほうでは「大か?」と独り言が聞こえる。ディーラーは数字の書かれたキーパッドに出た目を打ち込む。すると、当たりのマスが光り、電光掲示板に出た目が表示される。その瞬間、喜びとため息が入り混じって発せられる。喜ぶ顔。悔しがる顔。中には怒ってる顔も見える。「なっ!言ったとおりだろ。」と得意気になる奴もいる。左右のディーラーは光っていないマスのコインをすべて没収。光っているマスのコインに配当を与える。
ルールが分かり、僕はまず当たる確立1/2で、配当が2倍になる大に賭けた。サイコロが振られて2分が経過。「チン、チン、チン。」ベルが鳴る。真ん中のディーラーがカバーを開ける。結果は・・・。電光掲示を見つめる。2。4。6。計12。大。「よっしぁー。」
大のマスが光る。ディーラーがはずれのチップを回収する。そして、いよいよ配当が。僕の賭けた100$コインにもう100$乗せられて帰ってきた。顔がほころぶ。調子に乗って次も賭けたが、結果は外れ。そして、その次もだめ。それ以降、しばらくは300$から700$を行ったり来たりで、増えもせず減りもせず。だが、20分もするとだんだんと当たらなくなり、とうとう残り200$になった。
「これではまずい。方法を変えなければ。」
しばらく考える。・・・。ふっふっふっ。良いこと考えた。予知しよう。普段の生活では、人間は脳全体の約10%しか使っておらず、残り90%は未使用だ。もし、未使用のこの部分に予知する力があり、そこを使えればきっと未来がみえるはず。
中央のディーラーがサイコロを振る。「ドン・ドン・ドン。」なにもせずに1分経過。1分30秒経過。1分45秒。そのとき、テーブルを見つめ、15秒後どこが光っているかイメージする。大か小か大か小か大か小か・・・・・。しばらく見つめると、なんとなく大が光っているのが見える。それを信じて大に賭ける。「チン・チン・チン。」中央のディーラーがカバーを開け、キーパッドに数字を入力する。電光掲示板に数字が出た。14の大。当たった。予知できたの?僕って超能力者?
これ以降もこの方法で賭けた。すると、大に賭ければ目も大に。小に賭ければ目も小に。次から次へと当たるではないか。チップも200から500、1000,1500とどんどん増えていく。そして、1600$まで貯まった。その間に、2回連続で当たることはよくあり、最高4回連続で当たることもあった。やっぱ、僕って超能力者じゃない?テレビに出れるかも・・・。
人間というものは欲深いもので、これだけ当たると短時間でより多く稼ごうとする。今まで1回につき100$づつ賭けていたのを、200$づつ賭けることにした。200$に変えてから、始めのほうは当たったり、当たらなかったりで、増えもせず、減りもせず。おかしーなー。予知できてたはずなのに。時間が経つにつれて、徐々に当たらなくなってくる。なぜ?なぜなんだ?チップがどんどん減っていく。結局、1200$になってしまった。おかしー。さっきは、ギャンブルの神様の機嫌が良かっただけなのか?欲深い人間には、罰をお与えになるのか?
そんなとき、さっちゃんが僕に言った。
「そろそろ帰ろうか?」
今まで当たっていたときのことを考えるともう少しやりたい。が、きっとこれは欲深い人間に対し、神様がくれた最後のチャンスであろう。僕はお慈悲をありがたく受けた。結局、僕が1200$、さっちゃんが500$で終了し、約1万円勝つことができた。
帰りはシクロのおじちゃんたちを横目にして、歩いて帰った。そして、歩きながら考えた。今日勝てたのはたまたま運が良かったのか?それとも僕に超能力が芽生えたのか?今日の出来事を振返って考えた。が、超能力だとしても欲深さに左右されては、お金持ちにはとうていなれっこない。それで、どうでもよくなり考えるのをやめた。
 (翌日のドックレースでは、私のカンが冴え渡り、汚名返上しました。 byさちこ)

一番上に戻る