インドの洗礼を受ける (インド)

 
 初めてのインドの初めての地、コルカタに着いた私達は、空港からプリペイドタクシーで市内に向かった。事前にガイドブックで、インドで騙された体験談などを読んでいたせいで、かなり警戒しての乗車。料金は窓口に張り出してあったし、領収書もちゃんと貰ったし。車内では地図と道路をにらめっこしていたが、そのうち道がわからなくなったので、ドライバーになめられないように、ちょっと厳しい顔をしていたりした。
 目的のホテルには無事到着したが、ドライバーがメーターを指差して、お金を要求してきた。どおりでプリペイドタクシーなのにメーターを倒してると思った。もちろん払うわけはなく、さっさとホテルの中へ入る。それでもドライバーはしばらく何か叫んでいたけど、無視してたら、どこかへ行っちゃった。やれやれ、とホテルで胸を撫で下ろした。

 さて3日目。すでに「インド人のパワーはすごいな」と感じ始めていた。と同時に、「思っていたよりも、危ない感じはしないな」とも感じていた。そんな矢先、私達はインドの洗礼を受ける事になる。
 この日、早速コルカタの町を見て歩くことにした。まず行こうと思ったのが、カーリー女神寺院。ここは、カーリーという、生け贄を好む神様を祭ってある寺院で、毎日、何千という羊が生け贄として捧げられている。ちょっと悪趣味だけど、興味もあり、行ってみることにした。
 地下鉄に乗り、”カーリー女神寺院”という駅で降りる。まずは地下鉄で一騒動。インドに地下鉄があるなんて、しかもきれいでビックリだった。思わず、下車後、電車の写真を撮ってしまった。私のカメラのフラッシュが光った、と、どこからともなく現れたおじいさんが、私達を呼び止める。「今、写真を撮っただろ、鉄道マネージャーのところまで一緒に来い」と。そういえば、インドでは鉄道や橋などの写真は撮っちゃいけないって書いてあったっけ、と思い出したけどもう遅い。くにおくんは「別にマネージャーのところに行っても大丈夫だよ」と言う。でも、何か面倒な事になるのも嫌なので、おじさんに「知らなかったんです」と言ってみた。ところがおじさんは厳しい表情を崩さず「駄目だ」と言う。そこで、カメラの中の電車を撮ったデータを消してみせ「写真は消しました」と言って、なんとかその場を立ち去る事ができた。やれやれ、冷や汗をかいてしまった。

 地下鉄を出て、寺院に向かう。道がよくわからず何度も聞いてやっと寺院の近くに辿り着いた。お参りグッズを売るお店が建ち並び、とても賑わっている。寺院の入り口付近に差し掛かると、ガイドをしようとする人達が次々と声を掛けてくる。勝手にガイドをし始める人もいる。「どうせ後で”ガイド料”とか言って、たくさんお金を請求してくるんでしょ」と、そんな人たちを振り切って中へと入っていった。
 寺院の中は参拝するインド人で、ものすごい混雑。圧倒されて一瞬立ち止まった私達を、見逃さずにいた人がいたのだ。彼は「僕はテンプルマンだ」と言う。そんなこと信用できるわけないので無視していたけど、まわりの人達もみんな「彼はテンプルマンだ」と言う。そして案内を始めたので断ると「お金は要らない、テンプルマンだから」と言う。後から思えば”お金は要らない”なんて一番信用してはいけない言葉だと思うのに、この時は信じてしまった。ガイドブックの投稿に”カーリー寺院でテンプルマンという人が無料で案内してくれて助かった”みたいなことが書いてあったのを読んでいたせいもあったかもしれない。とにかく、私達はその”テンプルマン”について行った。
 すごい人ごみを掻き分け、”テンプルマン”は、私達を寺院の一番前に行かせてくれた。床には、花びらやら油やらが混じって、黒くヌメヌメしたものがビッシリこびりついている。寺院内では裸足にならなければいけないので、このヌメヌメがかなり気になる。後ろからも前からも押されて、立っているだけで大変だった。彼はさらに何か大きな声で叫んで、寺院の中にいる人たちをどかせた。すると一瞬だったけど、真っ黒い石のようなものに描かれた、ちょっぴりグロテスクなカーリーの顔が見えた。みんなこのカーリーを一目見ようと、押すな押すなの大騒ぎなのだ。おでこにピンク色の粉を付けてもらい、花びらをもらって、また人ごみを掻き分け、外へと脱出した。次に羊を生け贄にする場所を見に行った。ここでもう一度「あなたにお金は払いませんよ」と念を押したが、”テンプルマン”は「もちろん貰わない」と言った。
 最後に、お祈りをする場所にやって来た。ここからの”テンプルマン”の手際はよかった。まず、「ここは一人ずつお祈りする場所だから」と、すばやくくにおくんを中へと連れ込んだ。そして、私が呼ばれる。行って、お祈りをすると、何やらノートを持ち出した。寄付金のノートだ。各国の旅行者が名前と金額を書いている。金額の欄には500ルピーとか1000ルピーとか書いてある(この時は気づかなかったが、おそらく後から0を付け足したりしているのだろう)「100ルピー以上が望ましい」と言われたが、そんなに払わないよ、と思った。くにおくんの所を見ると、50ルピーと書いてあった。”テンプルマン”がすかさず、「彼は払ったよ」と言う。そこで何となく私も50ルピーと書いてしまった。
 お金を払った直後から、やられた、と思い始めた。私達を一人ずつにして、お金を払いそうなくにおくんから先に呼んで・・・。上手く考えている。その後、花びら代まで請求されたけど、そのころには怒りが頂点に達していて、断固拒否。

 インド3日目にしてまんまとやられてしまった。よく考えれば、あの混雑の中、カーリーの顔を見れたのは”テンプルマン”がいたからともいえる。私達だけだったら、寺院内に入るのさえ諦めていただろうな、と思うほどの混雑ぶりだったから。そう考えるとちょっとはお金を払ってもいいかな、と自分達を慰めてみたけど、それにしても2人で100ルピーは払いすぎだ。悔しー!みなさんはご注意ください

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