お財布がない! (ミャンマー2)

 
 ミャンマーの旅も終盤に差し掛かった、インレー湖からヤンゴンへの移動中に、悲劇は起きた。
 
 インレー湖のあるニャウンシェからヤンゴンには直通バスが出ていないので、途中のシェニャンという村で乗り換えなければならない。ニャウンシェからシェニャンまでピックアップトラック(乗り合いの軽トラックで、荷台に椅子が付けてある)に乗る。ピックアップは満員にならないと発車しない。私達が乗り込んだとき、乗客は私達だけだった。おかげでピックアップの荷台で1時間近く待つことになった。アジアのこの手の乗り物は、もうこれ以上乗れない!というところまで客を乗せないと、発車しないことが多い。この日、ニャウンシェでは5日に1度の大きなマーケットが開かれていて、近くの村の人たちが、いろいろな物を売りに来て賑わっていた。私達もイチゴを買い込んで、それを食べながら時間を潰すことにした。
 やっとピックアップが発車すると、30分程でシェニャンに到着した。ここで、他の町から来る長距離バスに途中乗車するため、村のT字路にあるチャイ屋さんで待つことになった。バスが来る予定は12時半、今12時なので、とりあえずチャイを頼み待つことにした。30分待ってもバスは来なかった。1時間待つ。やっとバスが来た!と思ったら、それは私達の乗るバスではなかった。ヤンゴンへは何社もバスを走らせているらしく、次から次へとバスがやって来るが、どれも私達の乗るバスではなかった。
 ミャンマーには日本のバスがたくさん走っている。日本で使わなくなったバスを持ってきているのだろうが、まだまだよく走るし、充分にきれいだ。ヤンゴンからマンダレーに行くときに乗ったのは”富士急行”のバスだった。バスが止まるたびに、♪遠き〜山に〜日は落ちて〜♪と懐かしい音楽がなるので、なんとなく中学生の時に行った、山中湖の林間学校を思い出してしまった。。
 それはそうと、いつまでたってもバスが来ないので、さすがに不安になってきた。チャイ屋の人に聞くと「待ってれば大丈夫」という。ミャンマー人の言うことだし、信じて待つことにした。そして2時間半後、2台の西武ライオンズのマークの付いたバスがやってきた。早速、乗り込むと、バスの中はかなりきれい。シートに座ってホット一息ついた。バスは満員で、補助席にもすべて人が座っていた。
 バスは順調に走り始めた、かと思ったが、2台並んで走っていたうちの、私達の乗っていない方のバスが、どうも調子が悪いらしく遅れてしまう。ときどき止まっては、そのバスを待つことになった。加えて、ミャンマーの道路には、たまに検問があり、そこでも止まるので、なかなかスムーズに進まない。夜中の休憩で、このままではあまりに遅くなると判断したのか、調子の悪い1台を残して、私達のバスが先に行くことになった。
 朝になり、朝食休憩でバスが止まった。かなり長くバスに乗っていて、私達は2人ともぐったりだった。ここからあとどれくらい掛かるのか、バスのドライバーに聞こうと思ったが、聞いてしまうと我慢が出来なくなるかも、と思い、まだまだ掛かると思っておくことにした。実際はそこから1時間、合計17時間のバスの旅だった。 ミャンマーでの移動は1度の移動がとても長く、毎回大変だったのだけど、今回が最高に辛かった。それもやっと終わり。いつものように忘れ物がないか確認し、「貴重品はある?」という、くにおくんの質問で再度確認して、ヤンゴン市内へと向かった。

 ホテルに荷物を置いて、疲れた体を引きずって、私達は、バングラディッシュ大使館へと向かった。この日、バングラディッシュ大使館でバングラディッシュのビザを取り、明日からゴールデンロックという、聖なる石を見に行く予定でいたのだ。地図で書いてあった場所に大使館が見つからず、ウロウロ探し回っていると、道路の端で荷物をぶちまけている人がいる。くにおくんだった。何をしているのかと思ったら、お財布がない!と言う。この時私は、バスを降りた時には確認したし、ホテルに置いてきたんだろう、と思っていた。でも心配なので、大使館探しは後にして、一度ホテルに戻ることにした。くにおくんはこの時、すでに盗まれた、と思っていたらしい。
 ホテルに戻ってもお財布はなかった。長距離バスに乗っているとき、鍵の閉まらないリュックのポケットにお財布を入れていたようだ。おそらくバスの中で盗まれたのだろう。私も焦ってきた。お財布に入っていたものは、現金、トラベラーズチェック、クレジットカード2枚、運転免許証、など。カードを2枚とも同じお財布に入れていたなんて、と思ってももう遅い。ホテルのフロントでバス会社に電話してもらったけど、お財布はないと言われた。

 まずは、カード会社に電話することにした。クレジットカードの紛失届にはコレクトコールが使えるのだけど、ここミャンマーでは、コレクトコールで掛けることはできないらしい。国際電話を掛けられる電話器も限られているらしくホテルの電話は使えなかた。そこで、国際電話を掛けるために電話局へ行った。電話局では、掛けたい電話番号を紙に書いて係りの人に渡す。すると係りの人がそこに電話を掛け、繋がると、電話局内にある電話ボックスの電話が鳴り、そこで受話器を取って話す、という仕組み。とても面倒くさい。
 まずは、1枚目のカード、これは実は私のカードだったため、私が電話に出る。ミャンマーからの国際電話は1分3$する。こんなとき、電話のオペレーターのお姉さんの丁寧な対応がまどろっこしい。5分ほど話し、「では、確認致しますね」と言われたところで電話が切れた。回線の状態も良くないのかもしれない。一応カードを無くした事は伝えたので大丈夫だろうと思っていたが、後で日本にいる姉に確認してもらったところ、電話が途中で切れたので、結局5分も話して、カードの使用停止の手続きは出来ていなかったそうだ。緊急の電話の対応をもう少し考えてもらいたいと、思う。

 次にくにおくんのカード。こちらは音声案内で「ただいま電話が大変混みあっております」となってしまい、取り次いでもらえなかった。困った私達は、何か方法はないかと、ヤンゴンの日本大使館に電話したけれど、「ホテルのフロントで掛けられないんですか〜?」などと言われ、ここに電話されても困るといった感じ。仕方なく、市内の高級そうなホテルで電話を借りることにした。ここは1分4.3$もする。でもこの際仕方ない。で、電話を掛けたけど、さっきと同じ。「ただいま電話が大変混みあっております」という音声案内が続き、ちっとも繋がらない。結局、音声案内を聞いて待っているだけで何もできなかったのに、35$も払った。本当に、緊急の電話の対応をもっと考えて〜!
 これ以上電話をしていたら、盗まれたお金より電話代の方が高くなってしまう。1枚のカードがANAカードだったので、ヤンゴンにあるANAのカウンターに行ってみようということになった。ANAのカウンターではカードの停止の手続きはできなかったが、日本語のできるミャンマー人の女性が親切に対応してくれ、「今、ミャンマー国内ではクレジットカードは使えないので、すぐに悪用される心配は少ないですよ」と教えてくれた。ちょっと安心し、日本にいる姉と連絡を取って、日本からカード会社に電話してもらい、無事、カードの使用を停止することができた。

 ミャンマーではトラベラーズチェックも使うことができないので、もちろん事務所もない。これは後日、インドのコルカタのアメックスで再発行してもらった。これにもかなり時間がかかったが、その日の内に新しいトラベラーズチェックを発行してもらえた。

 次の日、警察へ盗難証明書を発行してもらいに行った。警察では英語も通じなくて苦労するんじゃないかな?と思っていたのだけど、英語が通じる人がいて、日本語も少ししゃべれる人がいて、親切に対応してくれた。もちろん、お財布の捜索などはしてくれないけど、すぐに盗難証明書を作ってくれた。余談だが、警察所内に留置所があって、若い女性がたくさん留置されていた。ミャンマーでも売春などが問題になっているのかな?とチラリと思った。

 すでに、ゴールデンロックへ行くことは諦めていた私達は、残りの4日間、ヤンゴンの町をブラついて過ごした。これはこれで、また新しい発見もあって楽しかった。お財布を盗まれた心の傷が癒えるには、しばらく時間が必要だったけど・・・。

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