アンコールワットで倒れる (カンボジア2)

 
アンコールワットのある町、シュムリアップにやってきた。世界遺産という言葉を聞くと、どうも行ってみたくなるのだけれど、その中でもアンコールワットは特別な気がする。私にとって、この旅の第一番目の山場(山場がいくつあるのかはわからないけれど)だと思っていた。
 アンコールワット、という名前がとっても有名だけど、世界遺産になっているのはアンコール遺跡群。アンコールワット以外にもすごい遺跡がたくさんある。
 シュムリアップに着いたその日に、有名な日本人宿・タケオのシェークを飲みに行った(ここのシェークはおいしかった!)。そこにいた日本人旅行者から聞いた話によると、アンコール遺跡群の主なところは、自転車で充分見てまわれるとの事だった。自転車なら安いし、自分で自由に見てまわれる、ということで、自転車を借りることにした。

 1日目、アンコールワットからの朝日を見るために、早起きしようと思っていたのに、眠さに勝てず、出発が遅れてしまった。
 アンコールワットまでの道は、平坦だけど砂利をそのまま固めたような舗装で、走り心地はあまりよくない。それでも、朝のうちは涼しく、アンコールワットへの期待感もあり、自転車を漕ぐ足は軽かった。まっすぐな道をひたすら走っていくと湖にぶつかる。湖の奥は林になっていて、密林に埋もれていたアンコールワットが、目に浮かぶような、すてきな光景だった。
 アンコールワットに着いたときには太陽はもう昇ってしまっていたけど、朝焼けのアンコールワットのシルエットはすばらしかった。
 アンコールワットは、日の向きの関係から午後に見るほうが良いそうなので、午後にじっくり見ることにして、参道までで引き返し、バイヨンへ向かった。
 アンコールワットからバイヨンに向かう道は林の中を通り、自転車で気持ちよく走ることができる。両脇に神と阿修羅の並ぶ橋を渡り、四面仏ののった大きな門をくぐるとバイヨンが見えてくる。この橋と門で、バイヨンへのお膳立てはバッチリだ。
 バイヨンはアンコールトムという王都の中心にある寺院のこと。アンコールワットよりずっと小さい寺院だけれど、存在感は負けていない。レリーフもとてもきれいに残っているし、なんといっても観世音菩薩の四面仏には圧倒された。時間をかけて充分見たつもりでも、最後には、もうちょっと見ていたい、という思いが残る、そんなところだった。
 さらに自転車を走らせ、アンコールトム内の遺跡を順番に見ていく。象のテラス、ライ王のテラス、が特に見ごたえがあった。このテラスの見えるあたりには小さな食堂が何軒も並んでいる。だいぶ日が昇り暑くなってきたので、客引きの男の子の感じがよかった一軒の食堂に入り、昼食をとることにした。
 ご飯はおいしかったものの、食べ終わったあとどうも気分が良くなかった。食べ過ぎたかな?とも思い、しばらく休憩することにした。食堂でハンモックを貸してくれ、1時間ほど眠った。ところが起きてからもあまり気分は良くない。それでも午後はアンコールワットを見に行くつもりだったので、がんばってまた自転車を漕ぎ始めた。
 アンコールワットについてからも気分が良くなることはなく、普段なら隅から隅までガシガシ見てまわる私が、少し歩いては休み、休んではまた歩くという感じだった。それでも根性で、アンコールワットの一番高いところ、中央祠堂まで登った。高所恐怖症のくにおくんもがんばって登ってた。
 このがんばりがアダとなったのか、帰るころになるとますます具合は悪くなり、来るときには近く感じた道が、何倍にも遠く思えた。ヘロヘロになりながらやっとの思いでシュムリアップに到着し宿に帰ると、どうにも我慢できなくなりトイレで吐いた。寒気がして熱を測ると39度近い。酷暑季のシュムリアップでトレーナーとジャンバーを着て寝袋に入ってもまだ寒いという状態だった。ボーっとする頭でお昼のオムレツに当たったのかなと考えていた。寝ると気分が悪くなり吐くので眠れない。水分補給をしないと、と思い、くにおくんが、日本から持ってきたポカリスエットの粉を水に溶かしくれたけど、飲むとまた気分が悪くなる。飲んで吐いての繰り返しだった。少し落ち着いてきたころ、吐き気止めの薬を飲んで寝てしまうことにした。

 2日目、熱は下がったものの、遺跡巡りはつらいかな・・・、でも行けそうかな・・・、なんて思っていると、くにおくんがぐったりしている。どうやら熱があるようだ。こちらは旅の疲れが出たのかもしれない。アンコール遺跡群の入場3日券を買っていた私達にとって、1日潰れるのはツライ。でも、私も1人で出かけるほどの元気もなく、せっかくだけど今日は1日、宿で休むことにした。宿の近くに24時間営業のスーパーがあり、本当に助かった。コンビニのありがたさを痛感した時でもあった。

 3日目、体調は万全ではないものの、アンコール遺跡群の入場券は、今日が最終日。そこで車を1台借りて遺跡をまわることにした。1日30$と高かったのだが、いつものように値切る元気はなかった。車はトヨタのランクル。行くところ行くところで、地元のカンボジア人に大注目の車だった。クーラーもばっちり効いていてこのときの私達にはとてもありがたかった。このランクルのおかげで、見たかった東バライの遺跡を全てまわることができ、バンティアイ・スレイにも行くことができた。

 アンコール遺跡を前にして、2人でダウン。私は、一番元気なときに見たバイヨンの印象がとても強い。他の遺跡もすばらしかったけど、体調が良いときに遺跡を見たら、もっと大きな感動があったかもしれない。入場券をもう一回買おうかなとも思ったけど、それなりに満足感もあったし、お金もかかるということもあって、辞めた。きっと、どんなに時間をかけて見ても、もう一度来たくなる、アンコール遺跡はそんなところだと思う。「歳をとってから、2人でまたじっくり見に来たいね」なんていう約束もできたから、まあいいかな。

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